期限の利益喪失とは、分割払いなどの支払いを待ってもらえる権利を失い、残額を一括で返済しなければならなくなることです。この記事では、喪失する事由や喪失後に生じるリスク、通知が届いた際の対処法に加え、保証人への影響までを整理して紹介します。
ローンやカードの返済が遅れ、残額を一括請求されるのではと不安な方もいるでしょう。期限の利益喪失とは、支払期日まで支払いを待ってもらえる利益を失い、残債務を一括で請求される状態になることです。
本記事では、民法や契約で定められた喪失事由、リスク、通知が届いた際の対処法、保証人への影響まで解説します。
Q1: 期限の利益喪失とは何ですか?
期限の利益喪失とは、分割払いやローンなどで認められていた「期日まで返済しなくてよい」という債務者の権利(期限の利益)を失い、残っている債務の一括返済を求められる状態になることをいいます。
期限の利益とは
分割払いやローンでは、契約時に支払う時期があらかじめ決められています。そのため、期限の利益を喪失していない限り、原則として、支払期日が来る前に残りの金額まで請求されることはありません。
たとえば、残り60万円を毎月1万円ずつ返済する契約であれば、まだ支払期日が来ていない59万円分について、まとめて支払うよう求められることはありません。このように、決められた期限までは支払いを求められないことが、債務者にとっての「期限の利益」です。
一括返済義務が生じる法的な仕組み
分割払いの契約は、支払いを続けることを前提に、残りの金額を一度に請求しない仕組みになっています。しかし、返済の滞納など、契約書で定められた条件に該当すると、その前提が崩れ、残りの金額をまとめて支払う必要が生じることがあります。
いつから一括返済が必要になるかは契約内容によって異なり、条件に該当した時点で一括返済の義務が生じる場合と、金融機関から通知を受けた後に生じる場合があります。具体的な条件は契約書で確認しましょう。
Q2: 期限の利益を喪失する主な事由は何ですか?
期限の利益を喪失する事由には、破産手続開始の決定や担保の滅失など民法第137条に定められたものと、分割払いの滞納など契約書に個別に定められたものの2種類があります
民法で定める喪失事由
民法第137条は、一定の事情が生じた場合に、期限まで支払いを待ってもらえる状態を維持できなくなると定めています。具体的には、次のようなケースが該当します。
・債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
・債務者が担保を失わせたり、傷つけたり、その価値を減らしたりしたとき
・債務者が担保を提供する義務があるにもかかわらず、提供しないとき
債権者が十分な返済を受けられなくなるおそれがある場面であるため、法律上のルールとして定められています。
契約で定める喪失事由
ローンやクレジットカードなどの契約では、法律で定められたケース以外にも、期限の利益を喪失する条件が個別に定められていることがあります。たとえば、返済を一定期間滞納した場合や、ほかの借入について差し押さえを受けた場合などです。
こうした条件は契約ごとに異なるため、同じような借入でも扱いが変わることがあります。ローンなどを契約するときは、支払いが遅れた場合にどのような扱いになるのか、契約書の内容を確認しておきましょう。
Q3: 期限の利益を喪失するとどのようなリスクがありますか?
期限の利益を喪失すると、残債務の一括返済を求められる可能性があります。また、返済の遅れなどによって遅延損害金が発生することがあり、支払いができない状態が続けば、差し押さえなどの法的措置につながる可能性があります。
残債務の一括返済請求
期限まで分割で支払える契約でも、一定の条件に該当すると、まだ支払っていない残りの金額をまとめて請求されることがあります。残りの債務を短期間で用意しなければならなくなるため、家計や事業の資金繰りに大きな負担がかかるおそれがあります。
一括での返済が難しい場合は、放置せず、早めに金融機関などへ相談することが大切です。
遅延損害金の発生
返済が期日どおりに行われないと、契約内容に応じて遅延損害金が発生することがあります。遅延損害金は、支払いが遅れたことによる損害を補うために支払うものです。
返済が遅れる期間が長くなるほど負担が増える可能性があるため、支払いが難しい場合はそのまま放置せず、早めに金融機関などへ相談しましょう。
差し押さえなど法的措置への発展
一括請求に対応できない状態が続くと、債権者が裁判所を通じて給与や預金、不動産などの財産を差し押さえる法的措置に発展することもあります。
差し押さえに至る前に、できるだけ早く状況を整理し、対応を検討することが重要です。
出典:裁判所「民事執行」
Q4: 期限の利益喪失通知書が届いたらどう対処すればよいですか?
通知書が届いたときや滞納が続いているときは、状況が悪化する前に早めの相談が必要です。借入先の金融機関や弁護士などの専門家に相談することが、一括請求や差し押さえを回避するための第一歩になります。
期限の利益喪失通知書が届いたらやるべきこと
通知書が届いたら、まずは記載されている金額や期日、連絡先を確認しましょう。放置すると、法的手続きが進む可能性があります。
すぐに全額を用意できない場合でも、借入先に連絡を取り、今後の対応について相談する姿勢を見せることが大切です。
専門家へ相談する目安
一括での返済が難しい場合や、複数の借入があり、自分だけでは対応方法を判断できない場合は、早めに弁護士や司法書士などへ相談しましょう。専門家に相談することで、現在の状況に応じた解決方法を検討できます。
たとえば、借入先との話し合いによって返済条件を見直す方法や、債務整理などの手続きを検討できる場合があります。通知書が届いた時点で相談すれば、今後の選択肢を整理しやすくなります。
Q5: 保証人がいる場合、期限の利益喪失は保証人にどう影響しますか?
主たる債務者が期限の利益を喪失すると、債権者は保証人に対しても残債務の一括返済を請求できるようになります。
なお、保証人が個人の場合、債権者は喪失を知ったときから2か月以内に通知する義務を負い、怠ると一部の遅延損害金を保証人に請求できません。
保証人への通知義務
民法第458条の3では、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は喪失を知ったときから2か月以内に、保証人に対してその旨を通知しなければならないと定められています。
この規定により、個人の保証人は主たる債務者が期限の利益を喪失したことを把握し、遅延損害金が増える前に対応を検討できます。
なお、この規定が適用されるのは保証人が個人の場合であり、法人が保証人になっているケースには適用されません。
出典:法務省「2020年4月1日から 保証に関する民法のルールが大きく変わります P.7」
通知義務違反の影響
債権者が通知義務を怠った場合、喪失時から実際に通知するまでの期間に生じた遅延損害金については、保証人に請求できなくなります。ただし、期限の利益を喪失しなかったとしても発生していたはずの遅延損害金は、この制限の対象から除かれます。
ただし、元本や、通知後に発生した遅延損害金の返済義務がなくなるわけではないため、保証人になっている場合は、日頃から主たる債務者の返済状況を把握しておくことも大切です。
まとめ
期限の利益喪失とは、分割払いやローンなどで認められていた「期日まで返済しなくてよい」という債務者の権利(期限の利益)を失い、残っている債務の一括返済を求められる状態になることをいいます。
民法や契約書で定められた事由に該当すると発生し、遅延損害金や差し押さえなど、放置するほどリスクが大きくなります。保証人がいる場合は、保証人への影響も踏まえて早めの対応が重要です。
とくに住宅ローンの場合は、期限の利益を喪失すると、金融機関が抵当権にもとづいて自宅の競売を申し立てることがあります。競売の手続きが進む前であれば、任意売却によって自宅を売却し、残債務を圧縮する方法も検討できます。
株式会社アドワン・ホームでは、住宅ローンの返済にお困りの方など、不動産に関するお悩みに対して、士業と連携しながら任意売却をはじめとした解決策をご提案しています。
「住宅ローンの通知書が届いて不安」「自宅を今後どうすればいいか分からない」という方は、ぜひ無料個別相談をご利用ください。

株式会社アドワン・ホーム 代表取締役
古田 晋一
宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®︎認定者
新卒で入社した総合不動産賃貸業者にて賃貸仲介・管理業務等に従事したのち、住友林業ホームサービス株式会社にて不動産売買仲介を経験。
営業時代に最優秀個人売上賞(全社1位)をはじめとして住友林業グループ表彰(年間全社3位以内)を複数回に渡り受賞。店長・支店長時代には店舗損益予算達成率 全社1位、営業部長時代には部門損益予算達成率 全社1位を獲得するなど、各ステージで特別表彰を受賞。
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