上場企業を中心に保有する不動産を売却する動きが広がっています。好調な不動産市況が売却を促していることに加えて、保有不動産という資産を圧縮して、効率よく稼ぐ経営の浸透がその背景にあります。
今回は大企業が保有する不動産売却について書きたいと思います。
(掲載写真は大企業が保有する不動産とは関係のない一般的な空地です。)

保有不動産の売却は、上場企業の投資家が数値の向上を求める投資指標である「自己資本利益率(ROE)」の改善につながりやすくなります。不動産の売却資金を設備投資などに振り向け、利益を増やしていけばROEは押し上げられます。
現在は円安傾向であることや、不動産市況を鑑みて、海外投資家は不動産の購入意欲が高いです。また、都市部を中心に不動産市況が好調なので、国内投資家も意欲がおう盛で、好条件で売却しやすい環境が保有不動産の売却を後押しします。
宅急便のヤマト運輸を運営するヤマトホールディングスは、2025年に銀座の本社ビルなど4物件を売却しました。
調味料や冷凍食品などの味の素は、東京・京橋の本社ビルを2026年に売却し、近くの複合ビルを賃貸して移転しました。
防衛産業・航空宇宙・原子力などのIHIは、都内に多くの不動産を保有しており、その一部である江東区の3物件を今春に売却しました。IHIの創業は江戸時代という歴史ある大企業でもあり、譲渡益は約568億円にのぼります。売却資金は防衛や航空など成長分野の投資へ回す計画です。IHIの担当者は「資産売却を今後も検討していく」と語っています。
みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所が不動産業・建設業を除く事業会社を対象に集計したところ、2025年の国内不動産の売却額は前年比9%増の1兆2318億円と18年ぶりの高水準でした。
不動産サービスのジョーンズラングラサール(米国)によりますと、2025年の日本の不動産への投資額は6兆円を超えました。2026年は6兆円台半ばまで膨らむ見通しのようです。
最近では社歴の長い企業の売却も目立ちます。歌舞伎・映画などの松竹は福岡の賃貸不動産を、アパレルの三陽商会は新宿区・本社ビル土地の一部の売却を決めました。いずれも資産効率の改善などを目的としています。
企業が保有する不動産に対してアクティビスト(物言う株主)は圧力を強めています。アクティビストのジョーンズラングラサール(米国)が2026年5月に提出した変更報告書では、日本通運を傘下に持つNIPPON EXPRESSホールディングス株の買い増しが明らかになりました。エリオットは変更報告書で「新たなM&A(合併・買収)戦略やスピンオフ(切り離しての売却)」などを提案する方針を示しました。
地価の高騰によって企業が保有する不動産の時価が、簿価を上回る「含み益」の状態になっているケースが増えており、アクティビストの関心を集めやすくなっています。
元通産官僚の村上世彰氏が率いるアクティビストの村上ファンド(関連投資会社・親族を含む)側はフジテレビなどを運営するフジ・メディア・ホールディングスに対して、保有する不動産の売却を求めており、フジが保有する大手町の東京サンケイビルの売却先に注目が集まっています。ちなみに村上ファンドのオフィスは、弊社が入居している六本木ヒルズ森タワーにあります。
不動産サービスのCBREでは「株価や資本コストを意識した経営の浸透もあり、企業の不動産売却は今後も高水準で推移する」とみています。
もっとも、本社ビルを売却後にリースなどで使い続ける場合には、賃料負担が発生します。オフィス需給も引き締まっており、賃料も右肩上がりで上昇傾向しています。売却資金をテコに収益を伸ばすことが肝要で、収益が伸ばせなければ好循環は生じないのでその辺りがポイントになりそうです。

株式会社アドワン・ホーム 代表取締役
古田 晋一
宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®︎認定者
新卒で入社した総合不動産賃貸業者にて賃貸仲介・管理業務等に従事したのち、住友林業ホームサービス株式会社にて不動産売買仲介を経験。
営業時代に最優秀個人売上賞(全社1位)をはじめとして住友林業グループ表彰(年間全社3位以内)を複数回に渡り受賞。店長・支店長時代には店舗損益予算達成率 全社1位、営業部長時代には部門損益予算達成率 全社1位を獲得するなど、各ステージで特別表彰を受賞。
住まい
種別
最新記事
オンライン相談
ONLINE MEETING
遠方の方やお時間の都合が合わせにくい方は
オンラインでのご相談も可能です。
お問い合わせフォームから希望の日時とご相談内容をお知らせください。
オンライン相談の流れは予約完了後のご案内メールにてお送りいたします。ご希望の方は、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。



