2025.08.11 その他 税制・法律関連 代表ブログ その他

ふるさと納税の問題点

ふるさと納税返礼品ふるさとチョイスポイント付与寄付

ふるさと納税が拡大しています。

 

総務省が7月末に発表した2024年度の寄付額は計1.2兆円を初めて超えました。前年度比で14%増え、5年連続で過去最高を更新し続けています。最近は物価高を受けてコメを返礼品とする地方自治体への寄付が伸びていました。

 

今回はふるさと納税について書きたいと思います。

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ふるさと納税は自分が出身した自治体や応援する自治体へ寄付をすると、2000円を超える分を居住地に納める住民税や国の所得税から控除出来る仕組みです。自治体がお礼として特産品などを贈ります。

 

しかし、実際には出身自治体や応援自治体に寄付するのではなく、好みの返礼品がある自治体に寄付をして、返礼品を得る為の通販サイトのように使われているのが現状です。

 

節税の為に始める人は多く、仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営する企業が2025年6月に実施したアンケート(複数回答可)では、2025年に始めた理由として「ポイントが付与される」(55.6%)、「家計の助けになると思った」(51.1%)が上位で、「故郷や応援したい自治体があった」は4.4%にとどまりました。

 

ポイント付与が大きな動機であることを示したアンケート結果ですが、2025年10月からポイント付与がなくなります。ポイント付与の原資は仲介サイト企業の仲介手数料であることを問題視し、総務省がルールを改正したからです。

 

サイト間でポイント還元を競い合うような状況は「制度の趣旨にそぐわない」との判断ですが、国会での法改正をしないで総務省内の手続きで済む告示だけでは、「総務省は裁量権の逸脱にあたる可能性がある」と異議を唱えたのが大手仲介サイトの楽天グループです。法廷闘争となりますが識者の間では見方が分かれており、難しい司法判断になりそうです。

 

2024年の特徴は、コメの価格高騰で「コシヒカリ」などを返礼品とする自治体が寄付を集めました。「コシヒカリ」などを返礼品にしている新潟県南魚沼市への寄付額は前年比24%増で71億円になりました。「ふるさとチョイス」ではコメ全体の寄付額は4割も増えました。

 

寄付額1位は兵庫県宝塚市で約256億円ですが、市立病院に向けた市民2人からの約254億円の寄付があり、ふるさと納税分はごく僅かです。2位以下は人気の返礼品を扱うランキングの常連が上位を占めました。

 

2位はサーモン・イクラ・毛ガニなどが返礼品の北海道白糠町(約211億円)で2023年から2つ順位を上げました。3位は大阪府泉佐野市(約181億円)、4位は宮崎県都城市(約176億円)でした。

 

かつて、大阪府泉佐野市はアマゾンギフトカードを返礼品にしたことで総務省と激しい批判の応酬と法廷闘争を繰り広げ、「地場産品とはどの範囲なのか」や「返礼品とサイトへ支払う仲介手数料などの経費総額が寄付額の5割以下にする」など、ルールが整備されるきっかけになったことでも知られています。

 

寄付で潤う自治体は偏っており、都市部ではふるさと納税による税収の流出が拡大しています。2025年度の市町村民税の控除額合計の1位は横浜市(約343億円)で前年比13%増えました。2位は名古屋市(約198億円)、3位は大阪市(約192億円)と続きます。

 

都道府県別では東京都が最多となる約2160億円で、多額の税金が都外に流出しています。東京23区合計では約1065億円となり1000億円の大台を初めて超えました。23区内で1位は世田谷区(約123億円)、2位は港区(約91億円)、3位は大田区(約65億円)と続きます。都市部では地場産品が少なく魅力的な返礼品が提供出来ないところに、高所得者が多いことから控除額も大きくなりやすく、今後もこの流れが続きそうです。

 

地方交付税の交付団体はふるさと納税の制度によって税金が流出しても、75%は国から補填される仕組みがあります。一方で独自財源で財政を運営する東京23区などの不交付団体は補填の対象外です。多くの都内の自治体にとって控除額の全額が住民税の減収に直結しています。

 

膨らみ続ける流出額にどこかで歯止めをかけなければ、行政サービスの低下などに繋がります。既に庁舎の建て替え、区立学校の校舎修繕などに影響が出始めています。

 

2024年度に仲介サイト側に支払った仲介手数料の総額は1656億円になり、寄付額の13%に上りました。総務省は仲介サイト側に支払った総額を初めて公開しました。国民に意識を持ってもらおうという狙いがありそうです。返礼品の調達などの経費を差し引くと、自治体の手元に残るのは半分程度に留まります。

 

私もふるさと納税を利用していますが、改めて公表されたデータを見るといびつな構造であると感じます。募集経費の上限引き下げ、寄付額の上限の設定、税控除の縮小など、何らかの対策が必要と感じます。そもそも寄付は見返りを前提としません。その原点もすっかりかすみ、官製の通販サイトと化しているのが現状です。

古田 晋一
この記事を書いた⼈

株式会社アドワン・ホーム 代表取締役
古田 晋一

宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®︎認定者

新卒で入社した総合不動産賃貸業者にて賃貸仲介・管理業務等に従事したのち、住友林業ホームサービス株式会社にて不動産売買仲介を経験。
営業時代に最優秀個人売上賞(全社1位)をはじめとして住友林業グループ表彰(年間全社3位以内)を複数回に渡り受賞。店長・支店長時代には店舗損益予算達成率 全社1位、営業部長時代には部門損益予算達成率 全社1位を獲得するなど、各ステージで特別表彰を受賞。

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